槻木大橋を越えると、まもなく「尖石考古館西」という信号が見えてくる。「唐沢鉱泉」へは、この信号を右折し、約12キロ行けば良い。ここからは、原生林の中に敷かれた一本の道を山へと走っていく。別荘地やゴルフ場を過ぎ、「唐沢鉱泉」の案内板が右手に現れれば、残りは約5キロ。但し、この看板から先は、未舗装の砂利道。悪路が続くが、その先に湧く名湯を思い浮かべ、進んで頂きたい。針葉樹で包まれた周囲では、夏になればヒグラシが声を震わせ、多くの野生動物も顔を覗かせる。そんな環境を体感するのも楽しい。
「唐沢鉱泉」は、天狗岳などへの登山基地という役割を兼ねた一軒宿。館内には鹿の剥製やドライフラワーが飾られ、実に風趣をそそる。木張りの浴室に設えられた大きな窓からは陽光が差し込み、十分な開放感をもたらす。二つある浴槽には、どちらも源泉が注がれるため、湯花浮く本物の浴感を堪能できる。ここの泉質は二酸化炭素冷鉱泉。動脈硬化や高血圧に効くとされる珍しい泉質だ。何より、落ち着いた雰囲気が良い。静かな湯船から眺める外界には、手を伸ばせば届きそうな山の峰。これぞ高地に立つ一軒宿の妙味である。
帰り道のエコーライン。青天に誘われ窓を開ければ、届く日差しは初夏の装い。蓼科の自然は、夏を迎える準備ができたようだ。そろそろ、緑を愛でつつ、名湯に身を預ける優雅な世界へ出掛けられてはいかがだろうか。極上の清爽な風を受けながら、高原のにおいを感じる夏の旅へ。

TEL:0266-76-2525
■立寄り入浴:11時~16時
料金:700円
■4月中旬~1月中旬の営業